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困ったことが起きている
私はずっと、カバが好きだった。
丸くて、鈍くて、愛嬌がある。陸上動物の中で最も人を殺す生き物だとは思えないあの風貌に、学生時代からどうしようもなく心を掴まれてきた。就職面接でカバの話をして内定をもらったくらいだ。
なのに最近、困ったことが起きている。
ハゲワシが、気になって仕方がない。
外見0点、内面0点。
念のため言っておくと、私はハゲワシが好きではない。たぶん。
まず見た目がいただけない。忌々しく、グロテスクな顔と頭。あれを見て「かわいい」と言える人間は、どこかしらの回路に異常があると考えるのが普通だろう。
彼らは死肉をついばんで生きるため、遺体や腐肉に頭を突っ込む必要がある。だから病気にならないよう、丸坊主に進化した。それは理解できる。とても合理的だ。
ならあのザラザラブツブツした皮膚は何やねん。
ゆで卵みたいにツルッとさせるように進化させんかい。ザラザラと摩擦係数を上げてどうする。ツブツブで表面積を増やしてどうする。進化の方向性は誰か確認したのか。
しかも、
胃酸のpHが0から1らしい。なんでも、金属を溶かせるレベルの強酸らしい。あのザラザラ皮膚で頭を突っ込んでいる場所を、内側から溶かすような胃を持っている。外も内もどうかしている。腐肉に頭を突っ込んで、胃で溶かして、ブツブツ皮膚で闊歩する。きつい。
生態はどうか。
視力が抜群に良く、上空から死肉を見つけられる。しかもハゲワシには大中小と種類がいて、食べる順番や部位がそれぞれ違うため、仲間と競合することもさほどない。公園で違法に大量の食パンをもらう鯉やハトみたいな腹の満たし方が、サバンナでできるのだ。
さすがに惹かれん。。。はずなのだ。
同情1点。
調べていくうちに、少し可哀想な話も出てきた。
密猟者がハゲワシを毒殺することがあるという。
その理由は、「上空を飛んでいると密猟がバレるから」だ。
ハゲワシは意図せず、正義の目撃者になっているんだそうだ。
いや、無理よ。その程度の同情で好きになれるわけがないだろう。
ハゲワシがいなくなると生態系が崩壊するとも聞いた。腐肉を片付ける者がいなくなるからだ。目立たないが、いなくなって初めてわかる存在なのだという。
それも、わかった。わかったけど、だから何だという話だ。
嫌な理由を探し出したら恋
それでも私は、ハゲワシから目が離せない。
弱肉強食の競争の中で命を削り合う生き様が好きなんじゃなかったのか。なのになぜ、戦わず、奪われず、死んだものを淡々と片付けるこいつが気になるのか。
まだわからない。
ハゲワシみたいに、賢く生きることを、どこかで覚えてきたのかもしれない。
あるいは単純に、あのブツブツ皮膚に慣れてきただけかもしれない。
どちらにせよ、ハゲワシは今日も上空から死肉を探している。私は今日も、よくわからない何かを探している。0.3の視力で。(眼鏡等)
